L-アラビノースとは

L-アラビノースは、トウモロコシやサツマイモなど、植物に含まれている五炭糖の単糖の一種で、砂糖の約50%の甘味を持っています。
 
通常、私たちの身体に摂取された砂糖は、小腸でスクラーゼと呼ばれる酵素に100%分解されて、エネルギーとして蓄えられます。このエネルギーは脳が機能するために使われますが、余剰分は脂肪の形で蓄積されます。
 
しかし、「L-アラビノース」には、この分解酵素の働きを抑える作用があるので、約40%の砂糖は分解・吸収されずに素通りして、そのまま大腸へ届きます。

大腸では、到達した砂糖が微生物の働きで分解されて、有機酸が作られますので、例えば、難消化性オリゴ糖を摂取した時と同じくらいの、腸内環境を改善する効果を期待できます。

研究文献下記内容は参考のために当社が集約したものであり、詳細は原文をご参照下さい

【1.L-アラビノースの栄養・生理的機能と用途】

鹿児島大学 檜作 進氏
1999年発行「J.Appl.Glycosci.(応用糖質科学)Vol.46、No2」(P.159-165)

 
L-アラビノースは植物細胞壁のヘミセルロースの主成分の一つであり、樹木等に存在する糖は通常D型であるのに対し、アラビノースはL型であり、主として酸に弱いフラノース型として存在する為、セルロースよりも比較的温和な条件で加水分解することによって得ることが出来る。L型の多くはコーン穂軸や亜麻朱子に存在しており、自然界に豊富に存在する糖のひとつであり、甘味性としては砂糖の約50%を有している。
摂取したL-アラビノースの一部分は腸内細菌による発酵の末、短鎖脂肪酸に変化し、可溶性食物繊維としての機能を発揮することが期待されており、小腸で吸収されにくく、人体にとっては0カロリーのダイエットシュガーとしての評価も高い。また、スクラーゼの阻害作用が高く、血中インスリンの濃度上昇を顕著に抑制することも検証されている。
スクラーゼに対して砂糖の4~5倍、更にもっと高い親和性を持つことを示している。   L-アラビノースは肥満や高血圧、高脂血症などの予防にも役立つと考えられている。また、L-アラビノースには、カルシウムの吸収を促進する作用もあり、このような難消化性の糖は小腸でのカルシウムの吸収を促進するのではないかと考えられる。
砂糖の過剰摂取は様々な弊害が指摘されているが、L-アラビノースの併用により、砂糖の代謝を抑制する作用もあり、従来の甘味性を変化させることなく健康的に甘い物を飲食することが可能になる。

【2.L-アラビノースの機能性とその利用分野】

三和澱粉工業(株) 柴沼 清氏
2010年11月発行「ジャパンフードサイエンス」(P.67-71)

 
糖類制限による低血糖の心配もあるが、L-アラビノースはショ糖のみに作用することから、多少の過剰摂取では低血糖の可能性は低いと考えられている。L-アラビノースをショ糖と共に摂取すると、その数時間(2時間~)後に摂取したショ糖による血糖値上昇を約50%抑制する効果があると考えられている内容の論文。

【3.L-アラビノースの機能性と応用】

合同酒精(株) 世利 謙二氏
2001年12月発行「月刊フードケミカル」(P.19-22)

 
食品として摂取されたショ糖は消化管のショ糖分解酵素(スクラーゼ)の働きでグルコースとフルクトースに分解されたのち血液中に吸収される。この時L-アラビノースを一緒に摂取するとスクラーゼを選択的に阻害するので、ショ糖のかなりの部分は消化されにくくなる内容の論文。

【4.L-アラビノースの生理機能とその食品への応用】

ユニチカ(株) 山元 英樹氏
2013年9月発行「オレオサイエンス」第13巻第9号(P.429-434)

 
L-アラビノースは砂糖の加水分解酵素であるスクラーゼを阻害することによって、砂糖の消化吸収を抑え、血糖値の上昇を抑制する。糖質でありながら、多くの特定保健用食品が苦味等を有するのに対し、良質の甘味を有しながら吸収抑制の機能を持つ。トウモロコシ、甜菜を原料として使用する澱粉工場や甜菜糖工場などの製造過程で発生した副産物の繊維質に含まれるヘミセルロースを酸加水分解してL-アラビノースを遊離させ、活性炭による脱色、イオン交換樹脂を用いた脱塩、クロマト分離などの精製工程を行って主に製造されている。小腸のスクラーゼをL-アラビノースが特異的に阻害することが確認されており、小腸にはスクラーゼの他、マルターゼ・イソマルターゼ・ラクターゼ等の二糖類加水分解酵素も存在するが、これらの酵素に対しては阻害作用を起こさない。
L-アラビノースと難消化性デキストリンの配合では、難消化性デキストリン単独より血糖値売少抑制効果及びAUC(ROC曲線の右下部分の面積)の低減効果が相乗的に強化され、食品のGI値を低減する効果も示唆された。
今後の展望として、糖尿病が国民病といえる段階にあると言っても過言ではない現代、L-アラビノースは良質な甘味をもつ砂糖を用いながら、砂糖の吸収を抑制し、砂糖摂取に伴う血糖値の上昇及び摂取カロリーを抑制するという新たなコンセプトを提案できる。
成人が1日平均43.8g摂取している砂糖をL-アラビノースは1日平均6gの摂取で置き換えることが可能になる。

【5.L-アラビノース添加スクロースの盲腸内ビフィズス菌 菌数に及ぼす影響】

神戸女子大学 岩田 恵美子 氏
澤谷 幸 氏
竹山 杏奈 氏
大窪 亜由美 氏
八木 真知子 氏
堀田 久子 氏
三和澱粉工業(株) 出川 洋子 氏
(独)理化学研究所 辨野 義己 氏
2007年発行「栄養学雑誌 Vol.65、No.5」(P.249-254)
 

高まる健康志向の中で、カロリーオフの甘味料が注目されつつあり、中でもフラクトオリゴ糖は腸内のビフィズス菌を増やすことから多くの人に利用されている。この糖質はヒトが持つ小腸の酵素で分解されない難消化性糖質であるが、更に分子量の小さい糖質にも同様の活性をもつものが存在する。その一つにL-アラビノースがあげられる。これまでL-アラビノースについては小腸内スクラーゼ活性の阻害に関する論文が多数報告されてきた。
 
ラットにての実験結果ではあるが、ラットに1%のL-アラビノースを20%含有したスクロース食を4週投与し、盲腸内の細菌・重量・内容物・腹腔内脂肪重量について比較したところ、盲腸内容物の酢酸などの有機酸が有意に増加したことから、新たにL-アラビノースの腸内環境改善作用があることが明らかになった。さらに、L-アラビノースを含むスクロースを投与すると、小腸で消化吸収されなかったスクロースが盲腸や結腸に残存していることも明らかになった。ラットの体重や脂肪重量の減少傾向、盲腸重量の増加をもたらすこと、更に血清脂質や血清総コレステロール、肝臓総脂質を減少させることが明らかになった。さらに、盲腸内容物のコハク酸・プロピオン酸・乳酸等の有機酸の顕著な増加や、pHの減少傾向が示されている。

【6.L-アラビノースの忍容性と安全評価】

奈良県医科大学 大江 厚 氏
赤井 靖宏 氏
金内 雅夫 氏
土肥 祥子 氏
2002年3月発行
「新薬と臨牀」51巻3号(P.276-280)

 
食生活の欧米化と自動車などの普及による運動不足から肥満が増加し、糖尿病患者数も増加している。糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本になるが、食後の高血糖を抑制する食品や飲料が食事療法の補助手段として有用と考えられる。
 
L-アラビノースは難消化性の甘味ペントースであり、これまでの基礎的検討から、豚・兎・ ラット・マウスでショ糖のスクラーゼを特異的に阻害することが見出され、ラット・マウス・並びに健常人を対象とした糖負荷試験で負荷後の血糖上昇を抑制することが確認されている。L-アラビノース摂取の安全性は確認出来たが、摂取後の安全性を確認するため、別の試験を実施した。1回15g単回投与、及び1日3g連続2週間投与試験を実施し、その忍容性と安全性を確認したところ、1回15g以上の服用時には消化器症状が強くなる可能性が示唆された。しかしながら、これはL-アラビノース自体によるものではなく、スクロースが小腸で消化吸収されずに盲腸及び結腸に到達し、腸内発酵の著しい亢進と腸の蠕動運動の亢進を惹起したためと考えられる。また、健常成人を対象とした試験では、低血糖発作などの過度の血糖降下作用は認められなかった。
 
今後は肥満例若しくは高トリグリセリド血症を伴う症例に対するL-アラビノース長期投与の効果についても検証する必要がある。

【7.ヒトにおけるショ糖含有食品摂取後の血糖上昇に及ぼすL-アラビノースの作用】

国立健康栄養研究所 井上 修二 氏
合同酒精(株) 讃井 和子 氏
世利 謙二 氏
2000年発行「日本栄養・食糧学会誌 第53巻第6号」(P.243-247)

 
L-アラビノースについて、ヒトにおける血糖値の上昇、副作用、インスリン値、有効添加量を設定する為の実験研究を健常者・II型糖尿病患者夫々に対して行った結果、両者ともに全ての面において効果的な結果が得られ、L-アラビノースの有用性が認められた内容の論文。

【8.ラットにおけるショ糖の消化吸収及びエネルギー代謝に対するL-アラビノースの抑制作用】

                    合同酒精(株) 讃井 和子 氏
                            世利 謙二 氏
                  国立健康・栄養研究所 井上 修二 氏
1997年発行「日本栄養・食糧学会誌 第50巻第2号」(P.133-137)

 
空腹のラットにスクロースとアラビノースを同時投与し、血糖上昇率・呼気中の二酸化炭素濃度、及び体内に残された放射能量を調べたところ、適量のアラビノースであれば、全ての項目を有意に抑制することが判明したことということを発表した論文。

【9.機能性糖質L-アラビノースのセカンドミール効果】

三和澱粉工業(株) 柴沼 清 氏
2002年発行「FOOD STYLE21 Vol.16,No.12」(P.49-51)

 
ヒトにおけるL-アラビノースの有効量は摂取するショ糖に対して僅か3~5%であり、これ以上加えてもそれ以上の阻害効果は得られがたい。
 
L-アラビノースの摂取により、血中脂肪や脂肪の蓄積の抑制、体重抑制効果が報告されているが、ショ糖の吸収抑制のほか、インクレチンホルモン分泌の影響もあるのではないか。L-アラビノースは血糖値抑制以外にも様々な効果が期待できるため、さらなる用途の広がりが望まれる内容の論文。

【10.血糖値上昇抑制効果を有する機能性糖質
L-アラビノースの生理機能研究と工業生産技術の開発】

三和澱粉工業(株)柴沼 清 氏
出川 洋子 氏 
宮脇 洋之 氏
合同酒精(株) 世利 謙二 氏
讃井 和子 氏
2011年発行「応用糖質科学 第1巻第1号」(P.65-69)

 
三和澱粉工業(株)での澱粉製造過程において排出されるコーンファイバー(トウモロコシの種皮)の糖組成中にL-アラビノースが30%程度含まれている。コーンファイバーは水や温水に対し不溶或いは難溶であるため、酵素の作用は受けにくい。また、加圧反応により、酸分解段階でのL-アラビノースの収率は常圧の1.6倍になる。精製糖液にはL-アラビノースを含む複数の糖成分が含まれ、そのままでは粉末化は困難であり、副成分であるD-キシロースには過剰摂取による副作用がほうこくされていることから、安全で高純度のL-アラビノースを得るためには工業的クロマト分解法を用いて。結晶化処理による高純度で安定なL-アラビノース結晶粉末を得ることが出来た。
 
L-アラビノースのスクラーゼ阻害機構が不拮抗型であり、それは酵素と基質が形成した複合体(ES複合体)に対して複合(EIS複合体)し、D-グルコースとD-フルクトースの精製或いは遊離を阻害する。不拮抗型では、ES複合体が存在し続ける状態、つまり基質が流れ込み続けるような状態では阻害の効果が長時間維持される可能性がある。このように生理機能についてL-アラビノースは小腸スクラーゼを選択的に不拮抗型で阻害し、結晶上昇を抑制し、その効果は2~3時間以上持続するものと思われる。
 
L-アラビノースは単独摂取より、ショ糖と一緒に摂取する方が小腸からの移動が遅延する為、未消化物の大腸への流動が穏やかとなる。L-アラビノースは少量の摂取で効果が得られる一方、過剰摂取による腹部の膨張や浸透圧性の下痢、低血糖などの副作用が見られるが、ショ糖と共に摂取する限り起こり難い。
 
コーンファイバーを原料としてL-アラビノース製造過程において副生成物としてオリゴ糖が得られ、成分にはグルクロン酸を含む酸性のものとグルクロン酸を含まない中性のものが得られた。オリゴ糖により腸内細菌叢と脂質代謝の改善効果が期待できる。

【11. 健常人におけるL-アラビノース添加テーブルシュガー摂取後の血糖値変化】

合同酒精(株) 讃井 和子 氏
田中 裕子 氏
世利 謙二 氏
国立健康・栄養研究所 井上 修二 氏
2001年発行 「健康・栄養食品研究 Vol.4,No.1」(P.13-18)

 
健常人に1日2回×6gのアラビノースを午前・午後の食間に摂取してもらったところ、僅か6gであっても血糖値の上昇を抑え、気になる腸管への副作用も見られることがなかった為、ショ糖にアラビノースを添加することで高血糖や種々の合併症に対する有用性が期待できることを明らかにした実験の論文。

L-アラビノースの応用

食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成七年法律第百一号)附則第二条第四項に規定する既存添加物名簿(平成八年(1996年)四月十六日 厚生省告示第百二十号)にL-アラビノースに指定されました。
 

既存添加物名簿

(平成八年四月十六日)
(厚生省告示第百二十号)

食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成七年法律第百一号)附則第二条第四項に規定する既存添加物名簿を作成したので、同項の規定に基づき、告示する。
既存添加物名簿
 

一 アウレオバシジウム培養液(アウレオバシジウムの培養液から得られた、β―一・三―一・六―グルカンを主成分とするものをいう。)
二 アガラーゼ
三 アクチニジン
四 アグロバクテリウムスクシノグリカン(アグロバクテリウムの培養液から得られた、スクシノグリカンを主成分とするものをいう。)
五 アシラーゼ
六 アスコルビン酸オキシダーゼ
七 L―アスパラギン
八 L―アスパラギン酸
九 アスペルギルステレウス糖たん白質(アスペルギルステレウスの培養液から得られた、糖タンパク質を主成分とするものをいう。)
十 α―アセトラクタートデカルボキシラーゼ
十一 五′―アデニル酸
十二 アナトー色素(ベニノキの種子の被覆物から得られた、ノルビキシン及びビキシンを主成分とするものをいう。)
十三 アマシードガム(アマの種子から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)
十四 アミノペプチダーゼ
十五 α―アミラーゼ
十六 β―アミラーゼ
十七 L―アラニン
十八 アラビアガム(アカシアの分泌液から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)
十九 アラビノガラクタン
二十 L―アラビノース
二十一 L―アルギニン
二十二 アルギン酸
二十三 アルギン酸リアーゼ
二十四 アルミニウム
二十五 アントシアナーゼ
二十六 イソアミラーゼ
二十七 イソアルファー苦味酸(ホップの花から得られた、イソフムロン類を主成分とするものをいう。)
二十八 イソマルトデキストラナーゼ
二十九 イナワラ灰抽出物(イネの茎又は葉の灰化物から抽出して得られたものをいう。)
三十 イヌリナーゼ

 
厚生労働省の公式HPより(https://www.mhlw.go.jp

厚生労働省より特定保健用食品の血糖値関係の関与成分として、L-アラビノースが認められています。

特定保健用食品に表示できる保険の用途(例)

特定健康用食品では、個別の食品ごとに、その保険の用途に係る科学的な根拠が明らかであるかどうかなどを審査し、表示できる内容を許可している。

 
保険の用途の表示内容

血糖値関係

表示できる保険の用途(例)

糖の吸収を穏やかにします。

食後の血糖値が気になる方に適しています。

食品の種類(例)

粉末清涼飲料

茶系飲料 乾燥スープ

代表的な関与成分

難消化デキストリン

小麦アルブミン

グァバ葉ポリフェノール

L-アラビノース

 厚生労働省の公式HPより(https://www.mhlw.go.jp

平成30年(2018年)3月に消費者庁から機能性表示食品の届出等に関するガイドラインの改正により、L-アラビノースがリストに追加されました。

 

食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄養素 

糖類

対象となり得る上記の構成成分など(例)

L-アラビノース、パラチノース、ラクチュロース

消費者庁の公式HPより(https://www.caa.go.jp

  1. L-アラビノースの応用

20103月 特定保健用食品「アラビノシュガー」が日清オイリオグループから発売されました。
関与成分:
L-アラビノース
内容量と販売価格:
顆粒 180g \714円、800g\2,520
 
20122月 特定保健用食品「三和アラビノinシュガー」が三和澱粉工業株式会社から発売されました。
関与成分:
L-アラビノース
内容量と販売価格:
テーブルシュガー 3g---円、1000g---
 
200012月 特定保健用食品「あなたの味方」が三井製糖株式会社から発売されました。
関与成分:
L-アラビノース
内容量と販売価格:
300g---
 
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※上記すべて現在販売中止されているようです。